税理士法人研究

個人税理士事務所で働くリアル|所長の人柄で全てが決まる

個人税理士事務所で働くメリット・デメリットを徹底解説。所長との相性、年収の現実、入所前に確認すべきポイントを業界経験者の視点からお伝えします。

税理士業界で働く人の多くは、Big4や大手法人ではなく、所長が一人で運営する個人税理士事務所に勤めています。税理士事務所の大半は従業員10名以下の小規模事務所であり、業界の主力はここです。

しかし、個人事務所の情報はネット上に出回りにくく、「実際のところどうなの?」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。筆者は4社を経験する中で、中小規模の事務所の現実について多くの情報を得てきました。この記事では、個人税理士事務所で働くリアルを正直にお伝えします。

個人税理士事務所の年収事情

まず最も気になる年収についてです。結論から言うと、個人事務所の年収は400〜600万円が中央値です。

経験年数

年収レンジ

備考

未経験〜2年

300〜400万円

科目合格なしの場合はさらに下がることも

3〜5年

400〜500万円

一人で申告書を完成できるレベル

5〜10年

450〜600万円

事務所の売上と顧客層次第

10年以上(番頭格)

500〜700万円

所長の右腕として事務所を回す立場

この金額を見て「少ない」と感じる方もいるかもしれません。Big4なら5年目で700〜800万円に届くことを考えると、確かに差はあります。しかし、個人事務所には数字だけでは測れないメリットもあります。後ほど詳しくお話しします。

年収を決める最大の要因:事務所の顧客層

個人事務所の年収は、所長個人のスキルや方針以上に「事務所がどのような顧客を持っているか」で決まります。

  • 記帳代行中心の事務所:単価が低く、スタッフの年収も上がりにくい(300〜450万円)
  • 法人顧問中心の事務所:安定した報酬があり、スタッフにも還元しやすい(400〜550万円)
  • 相続・資産税に強い事務所:高単価案件が多く、年収も高い傾向(500〜700万円)
  • 医療・建設など特定業種特化の事務所:専門性が高く、安定した高単価(450〜650万円)

入所する前に、その事務所の主要な収益源が何かを確認することは極めて重要です。記帳代行が売上の大半を占める事務所では、どれだけ頑張っても年収には限界があります。

「所長の人柄で全てが決まる」は本当か

タイトルにもある通り、個人税理士事務所の働きやすさは所長の人柄と経営方針で95%決まると言っても過言ではありません。

良い所長のパターン

  • 教育熱心:丁寧に仕事を教えてくれる。質問しやすい雰囲気を作っている
  • 権限委譲:一定のレベルに達したスタッフには担当顧客を任せてくれる
  • 試験勉強に理解がある:繁忙期以外は定時退社を推奨し、試験休暇も認めてくれる
  • 待遇改善の姿勢:事務所の売上が伸びればスタッフの給与にも反映する

注意すべき所長のパターン

  • ワンマン経営:所長の言うことが絶対で、スタッフの意見を聞かない
  • 業務を丸投げ:教育なく「やっておいて」と任せる。ミスがあれば怒る
  • 試験勉強への無理解:「仕事が先だ」というスタンスで残業を当然視する
  • スタッフを経費扱い:売上が上がっても給与に反映しない

問題なのは、入社前に所長の人柄を見極めるのが難しいということです。面接では良い印象を与えていても、実際に入ってみたら全く違った、というケースは珍しくありません。

入所前に確認すべきチェックポイント

個人事務所に入る前に、以下の点を必ず確認してください。可能であれば面接時に直接聞くか、転職エージェント経由で情報を集めることをおすすめします。

1. スタッフの在籍年数

これは最も重要な指標です。スタッフが3年以上定着している事務所は、環境が良い可能性が高いです。逆に、毎年のように人が辞めている事務所は要注意。面接時に「現在のスタッフの方の在籍年数を教えていただけますか」と聞くのは全く失礼ではありません。

2. 繁忙期の残業時間

個人事務所の繁忙期は確定申告シーズン(2〜3月)と3月決算法人の申告期限(5月)です。「繁忙期は忙しい」のはどこも同じですが、残業が月80時間を超えるような事務所は人員不足か業務効率に問題がある可能性があります。

3. 使用している会計ソフト

弥生会計、TKC、freee、マネーフォワードなど、事務所によって使用ソフトが異なります。クラウド会計に対応している事務所は比較的新しいやり方を取り入れている可能性が高く、業務効率化への意識も高い傾向があります。

4. 顧客対応の範囲

「記帳から申告まで全て一人で担当するのか」「所長が最終チェックするのか」「顧客との面談は誰が行くのか」——この辺りの業務範囲を確認しておくことで、入社後のギャップを減らせます。

5. 試験勉強への配慮

科目合格を目指しているなら、試験勉強に対する所長の姿勢は必ず確認してください。「全面的に応援する」と言いながら実際には残業が多くて勉強時間が取れない、というケースは少なくありません。具体的に「繁忙期以外の退社時間」「試験休暇の有無」を聞きましょう。

個人事務所で働くメリット

1. クライアントとの距離が近い

個人事務所の最大のメリットは、経営者と直接やりとりできることです。Big4では上場企業の経理部長が相手ですが、個人事務所では中小企業のオーナー社長と直接対話します。経営者の悩みを聞き、税務面からアドバイスする経験は、将来独立を考えている人にとって何よりの財産です。

2. 業務の全体像が見える

Big4では担当する業務が細分化されがちですが、個人事務所では記帳から申告まで一気通貫で担当します。税務業務の全体像を把握できるのは、特にキャリアの初期段階では大きなメリットです。

3. 通勤のしやすさ

個人事務所は住宅地やターミナル駅の近くにあることが多く、自宅から近い事務所を選びやすいです。通勤時間が短縮できる分、勉強時間やプライベートの時間に充てることができます。

個人事務所で働くデメリット

1. 年収の上限が見えやすい

前述の通り、個人事務所では年収600万円がおおよその上限です。それ以上を目指すなら、準大手以上の法人に転職するか独立するしかないというのが現実です。

2. スキルアップの機会が限られる

国際税務やM&A税務など、高度な専門分野の経験は個人事務所では積みにくいです。顧客が中小企業中心のため、扱う税務論点の範囲にも限界があります。

3. 所長に依存するリスク

所長が体調を崩したり、万が一のことがあった場合、事務所そのものの存続が危うくなります。所長一人に経営が依存している以上、このリスクは常に存在します。

個人事務所が向いている人・向いていない人

向いている人

向いていない人

将来独立開業を考えている

年収700万円以上を目指したい

クライアントと深い関係を築きたい

大型案件や専門分野を経験したい

地元で安定して働きたい

組織的な研修制度を求めている

ワークライフバランスを重視する

スピーディーな昇給を期待している

まとめ:個人事務所の選択は「所長選び」

個人税理士事務所で働くことは、良い所長のもとであれば非常にやりがいのある経験になります。逆に、所長との相性が悪ければストレスフルな毎日になりかねません。

個人事務所を選ぶことは、会社を選ぶというより「師匠を選ぶ」に近い感覚です。面接の段階で所長の人柄や経営方針をしっかり見極め、自分のキャリアプランに合った事務所を選んでください。焦って入所するよりも、複数の事務所を比較検討する方が後悔のない選択につながります。

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Suger税理士

税理士資格保有。会計事務所・税理士法人での実務経験を活かし、会計業界のキャリア・転職に関するリアルな情報を発信しています。

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