キャリアパス別ガイド

会計事務所を辞めたい人へ|税理士が教える退職前に考えるべき5つのこと

会計事務所を辞めたいと感じている方へ。退職のタイミング、転職先の選び方、年収への影響など、税理士として知っておくべきポイントを経験者目線で解説します。

「会計事務所を辞めたい」は甘えではない

「会計事務所を辞めたい」と検索しているあなたに、まず伝えたいことがあります。辞めたいと思うことは甘えではありません。むしろ、自分のキャリアと真剣に向き合っている証拠です。

会計事務所には素晴らしい職場もあれば、正直に言って「早く辞めた方がいい」職場もあります。筆者自身、4つの業界を経験してきましたが、合わない環境で無理に頑張り続けるよりも、早めに次のステップに進む方がキャリア全体にとってプラスになるケースを数多く見てきました。

会計事務所を辞めたくなる5つの典型的な理由

1. 繁忙期の激務が限界

確定申告時期(1月〜3月)と決算期(4月〜5月)は、毎日夜10時〜11時まで残業するのが当たり前という事務所は少なくありません。筆者の経験では、繁忙期は月初が最も忙しく、月中・月末にかけて徐々に落ち着くグラデーションがありましたが、それでも土日出勤はそれなりにしていました。期日はタイトなのに先方からの資料提出が遅れる——自分でコントロールできない領域でしわ寄せが来るストレスは、メンタルに大きな負担をかけます。

2. 年収が低すぎる

会計事務所の年収は、特に小規模事務所だと300万〜400万円台に留まることが珍しくありません。税理士試験という難関資格の勉強をしながら、あるいは科目合格を持ちながらこの年収では、割に合わないと感じるのは自然です。筆者も最初のキャリアでは350万円からスタートしましたが、転職を重ねることで年収を大幅に上げることができました。

3. 教育体制がない

「見て覚えろ」文化が根強い事務所は今でも存在します。手取り足取り教えてくれる事務所は少なく、自分で考えて動くしかない環境が多いのが実態です。これは成長環境として良い面もありますが、完全に放置されるのは話が別です。特に未経験で入所した場合、基礎を教えてもらえないまま担当を持たされると、ミスが増えて自信を失う悪循環に陥ります。

4. 所長やスタッフとの人間関係

小規模な会計事務所では、所長の性格や方針がそのまま職場環境に直結します。パワハラ気質の所長、古い慣習を押し付けるベテランスタッフ、コミュニケーションが取れない同僚——こうした人間関係の問題は、個人の努力で解決できる範囲を超えていることが多いです。

5. キャリアの先が見えない

「このまま同じ事務所にいて、自分はどこに行くのだろう」という不安。特に中小事務所では、記帳代行や申告書作成が中心で、高度な税務スキルが身につかないケースがあります。将来的に独立したい、年収を上げたいと考えるなら、より専門性の高い業務を経験できる環境に移ることを検討すべきです。筆者が最初に勤めた政府系金融機関では、完全ルーティン・マニュアル通り・裁量なし・年功序列・減点方式という環境でした。市場での競争がないからサービス品質も業務効率もガラパゴス化しており、「ここにいたらマズい」と心から思ったのが転職の原動力でした。成長実感がゼロの環境に留まる必要はありません

辞める前に考えるべき5つのポイント

1. 辞めたい理由は「環境」か「自分」か

まず冷静に見極めてほしいのは、辞めたい原因が環境にあるのか、自分にあるのかという点です。残業代が出ない、パワハラがある、明らかに業務量が異常——これらは環境の問題であり、転職で解決できます。一方、「仕事のスピードが遅い」「ミスが多い」といった課題は、環境を変えても繰り返す可能性があります。ただし、教育体制が整った環境に移れば解消するケースも多いので、必ずしも自分だけの問題とは限りません。

2. 転職市場での自分の価値を知る

辞める前に、転職エージェントに登録して市場価値を確認してください。科目合格の有無、実務経験の内容、年齢によって、転職先の選択肢と年収レンジは大きく変わります。思っていたより市場価値が高いことがわかれば、前向きな気持ちで転職活動に臨めます。

3. 在職中に転職活動を始める

衝動的に辞めるのではなく、在職中に次を決めてから退職するのが鉄則です。収入が途切れると焦って条件の悪い転職先を選んでしまうリスクがあります。筆者も転職活動は閑散期に始めました。面接は会社終わりが基本で、リモートワークの日は昼休みにオンライン面接を組むなど工夫していました。

4. 繁忙期を避けて動く

転職活動は閑散期(6月〜11月頃)に始めるのがベストです。繁忙期に転職活動をすると、面接の時間が確保できない、引き継ぎが困難になる、現職への迷惑が大きくなるなど、デメリットが多いです。

5. 退職交渉への心構え

退職を伝えると、一定の引き留めはあります。条件改善(年収アップ、業務量の調整等)を提示されることもありますが、筆者の経験では、こうした条件改善は数ヶ月〜半年で形骸化していくことが多いです。退職の意思が固まっているなら、強い意志を持って伝えるしかありません。

会計事務所を辞めた後のキャリア選択肢

より良い会計事務所・税理士法人に転職

同じ業界内での転職は最もスムーズです。準大手〜大手の税理士法人に移れば、年収100万〜200万円アップも珍しくありません。教育体制や福利厚生が整っている法人を選ぶことで、今の不満の多くを解消できます。

事業会社の経理・税務部門

勤務するなら大企業の経理・財務部門がベストだと考えています。上場企業であれば給与も良く、残業もひどくないケースが多い。繁忙期の波も税理士法人ほど激しくなく、安定した働き方が実現できます。上場企業税務や高度な税務の経験があれば、名だたる大企業に入ることも十分に可能です。

独立開業

税理士資格があれば、最終的には独立という選択肢もあります。ただし、中小企業の記帳代行・申告代行だけでは単価が低く、資格の難易度に見合う報酬を得るのは難しい。独立で成功するには、事業承継、国際税務、資産税など「尖った専門性」を持つことが鍵になります。

まとめ:我慢の先にキャリアはない

合わない環境で我慢し続けても、得られるものは少ないです。その職場で活躍できなくても、次の職場で活躍できる可能性は十分にあります。ただし、次の転職先は「自分の市場価値を高められるか」という基準で選んでください。少し苦痛を伴うくらいの環境の方が、長期的なキャリア形成には良いです。楽な道を選ぶのではなく、成長できる道を選ぶことが大切です。まずは転職エージェントに相談して、自分の市場価値と選択肢を把握することから始めましょう。今より早い時はありません。転職したら仕事も求められる能力も評価軸も変わります。今の職場が全てではないのです。

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Suger税理士

税理士資格保有。会計事務所・税理士法人での実務経験を活かし、会計業界のキャリア・転職に関するリアルな情報を発信しています。

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