キャリアパス別ガイド

税理士×AIの未来|淘汰される人・生き残る人の分岐点

AIで税理士は不要になるのか?代替される業務・されない業務を明確に整理し、AI時代に生き残る税理士の条件を現役税理士が本音で解説します。

「AIに税理士の仕事が奪われるのでは?」——この問いに対する筆者の答えは明確です。代替される部分はある。しかし、すべてが代替されるわけではない。大事なのは、自分がどちら側にいるかを正しく認識することです。

AI技術の進化は確実に会計業界に影響を与えています。しかし、「税理士は不要になる」という極端な議論は本質を見誤っています。この記事では、AI時代に淘汰される税理士と生き残る税理士の分岐点を、具体的に解説します。

AIに代替される業務・されない業務

業務

AI代替の可能性

理由

記帳代行

★★★★★(非常に高い)

定型的なデータ入力はAIの最も得意な領域

確定申告(個人・簡易)

★★★★☆(高い)

パターン化しやすい。フリーランスの確定申告はすでにほぼ自動化可能

給与計算・年末調整

★★★★★(非常に高い)

計算ルールが明確で、例外処理も限定的

法人税の申告書作成

★★★☆☆(中程度)

申告書作成自体は自動化が進むが、税務判断は人間が必要

税務相談・税務判断

★★☆☆☆(低い)

税法は解釈に幅があり、個別事情に応じた判断が必要

M&A・組織再編の税務

★☆☆☆☆(非常に低い)

複合的な要素を考慮した戦略設計が必要

経営コンサルティング

★☆☆☆☆(非常に低い)

経営は複合的要素の塊。戦略にはクリエイティビティが必要

相続税の財産評価

★★☆☆☆(低い)

不動産の個別評価、特殊事情の考慮はAIでは難しい

なぜ「税務判断」はAIに代替されにくいのか

税法には「解釈の幅」がある

これが最も重要なポイントです。税法の条文は一見明確に見えますが、実際の適用場面では解釈に幅があるケースが非常に多い。個別の事実関係に対して、過去の判例や実務慣行、税務署とのやりとりの経験を踏まえて判断する必要があります。

たとえば「この取引は資本取引か損益取引か」「この費用は損金算入できるか」といった判断は、条文だけでは答えが出ないことが多い。ここに人間の税理士の存在価値があります。

解釈の仕方は「暗黙知」として蓄積される

経験を積んだ税理士が持っている「この案件はこう処理すべき」という判断力は、明文化されたルールではなく暗黙知として蓄積されたものです。「以前似たケースで税務調査を受けたとき、こういう論点が指摘された」「この税務署の管轄ではこういう傾向がある」——こうした知識はAIには獲得しにくい。

経営判断には創造性が必要

税理士の仕事が「申告書を作ること」だけなら、確かにAIに代替される日が来るかもしれません。しかし、経営者に対して「事業をどう展開すべきか」「節税と投資のバランスをどう取るか」といった戦略的な助言をする仕事は、複合的な要素を統合するクリエイティビティが必要です。これはAIが最も苦手とする領域です。

淘汰される税理士の特徴

「代行屋」としてだけ機能している人

顧客の面倒な業務を代わりにやっているだけの税理士は淘汰されます。記帳代行、申告書作成、年末調整——これらは「顧客がやりたくないことを引き受ける」業務です。AIやクラウド会計がこれらを自動化したとき、存在価値がなくなります。

具体的に淘汰リスクが高いパターン

  • 記帳代行と定型的な申告が業務の80%以上を占めている
  • 税務相談にほとんど対応せず、ルーティン業務だけをこなしている
  • ITツールの導入に消極的で、紙ベースの業務から脱却できていない
  • 顧客との関係が「毎年申告書を出すだけ」で終わっている
  • 税制改正のキャッチアップを怠り、過去の知識だけで仕事をしている

生き残る税理士の特徴

「判断」と「戦略」を提供している人

AIに代替されない価値を提供している税理士は、以下のような仕事をしています。

  • 複雑な税務判断 → 条文の解釈に幅がある場面で、最適な処理を選択する
  • 経営に踏み込んだ助言 → 決算の数字を読んで経営改善の提案ができる
  • 高度な専門税務 → M&A、組織再編、国際税務、相続税の財産評価など
  • 税務調査への対応 → 税務署との折衝は人間同士のコミュニケーション
  • 経営者の意思決定サポート → 「数字のプロ」として、経営の意思決定に関わる

AI時代に向けて今からやるべきこと

1. 高度な税務案件の経験を積む

記帳代行と定型申告だけの事務所にいると、AI時代に居場所がなくなります。高度な税務や経営に踏み込んだ支援を行っている事務所を選ぶべきです。転職先の選び方が、そのままAI時代のサバイバル戦略になります。

2. AIを「脅威」ではなく「ツール」として捉える

AIを恐れるのではなく、活用する側に回ってください。AIが記帳や定型業務を自動化してくれるなら、空いた時間で高付加価値の業務に集中できます。AIを使いこなせる税理士は、AIに淘汰されるどころか生産性が何倍にもなる可能性があります。

3. コミュニケーション能力を磨く

経営者との信頼関係は、AIには構築できません。「この人に任せておけば安心」と思ってもらえる関係性は、対面でのコミュニケーション、長年の付き合い、困ったときの迅速な対応から生まれるものです。

4. 専門分野を確立する

「何でもやります」の税理士は、AIに最も置き換えられやすい。特定分野のスペシャリストになることで、AIでは代替できない独自の価値を持つことができます。

筆者の見解:AI時代でも税理士は「劇薬」であり続ける

AIの進化で税理士の仕事の一部が自動化されるのは事実です。しかし、税法の解釈、経営判断のサポート、クライアントとの信頼関係——これらは人間の税理士にしかできない仕事です。

むしろAI時代には、定型業務から解放された税理士が、より高度な判断や戦略の提案に集中できるようになります。「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIのおかげでより価値の高い仕事に集中できる」——そう捉えられるかどうかが分岐点です。

税理士を目指している方、税理士としてキャリアを積んでいる方は、「代行屋」ではなく「判断と戦略を提供する専門家」を目指してください。そのためには、高度な税務やコンサルティングの経験を積める環境に身を置くことが最も重要な一歩です。

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Suger税理士

税理士資格保有。会計事務所・税理士法人での実務経験を活かし、会計業界のキャリア・転職に関するリアルな情報を発信しています。

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