筆者は政府系金融機関、準大手税理士法人、大手コンサルティングファーム、上場企業と、4つの会社を経験してきました。年収は350万円から800万円へ。3回の転職を経て、税理士としてのキャリアを築いてきました。
今振り返ると、「あの頃の自分に伝えたかった」ことがたくさんあります。もし転職前の自分にアドバイスできるなら、何を言うか。この記事では、3回の転職と4社での経験から得た5つの教訓をお伝えします。
今まさに転職を考えている方、税理士としてのキャリアに悩んでいる方に、少しでも参考になれば幸いです。
教訓1:特化型エージェントを使え
これだけで転職の成功確率が劇的に変わる
最初に言いたいのは、税理士の転職には必ず会計業界に特化したエージェントを使えということです。
筆者は最初の転職で総合型エージェントに登録し、ひどい目に遭いました。科目合格の価値を理解してもらえず、的外れな求人を紹介される。「簿記論の科目合格でしょ?」と言われたときの絶望感は今でも覚えています。
特化型エージェントに切り替えてからは、世界が変わりました。科目合格の市場価値を正しく評価し、各法人の内部事情まで把握した上で求人を紹介してくれる。年収の提示額も、キャリアアドバイスの質も、すべてが別次元でした。
結果として、2科目合格の段階で準大手税理士法人に転職でき、年収は150万円アップ。この成果は特化型エージェントなしでは実現できなかったと断言できます。
なぜ特化型が強いのか
税理士業界は非常にニッチです。科目合格制度、法人の序列、業務内容の違い——こうした業界固有の知識がないと、適切なマッチングはできません。
判断基準 | 非特化型の理解度 | 特化型の理解度 |
|---|---|---|
科目合格の市場価値 | ほぼ理解していない | 科目ごとの評価を熟知 |
法人の規模感・序列 | Big4くらいは知っている | 準大手・中堅の特色まで把握 |
税務の専門分野の違い | 「税務」で一括り | 法人税・相続・国際税務の違いを理解 |
法人内部の雰囲気 | 求人票の情報のみ | 実際に訪問して現場を知っている |
転職は人生の大きな決断です。その判断材料を提供してくれるパートナーの質は、妥協しないでください。
教訓2:年収だけで決めるな
年収アップの先にあるもの
筆者は4社それぞれで年収がアップしました。350万→500万→700万→800万。数字だけ見れば「年収アップを目的に転職した人」に見えるかもしれません。
でも実は、年収を最優先にして転職を決めたことは一度もありません。
最初の転職では「自分の専門性で勝負したい」、2回目は「ディール全体に関わりたい」、3回目は「当事者として仕事がしたい」。年収はその結果として付いてきたものです。
「年収は高いけど合わない職場」の怖さ
税理士業界にいると、「年収は高いけど精神的に限界」という人を少なからず見かけます。特にBig4や大手コンサルは年収が高い分、要求水準も高い。年収だけに惹かれ��入ると、1〜2年で燃え尽きてしまうケースもあります。
大切なのは、「そこで何を得られるか」「自分のキャリアにどうつながるか」を考えること。年収は重要な要素の一つですが、それだけで決めると後悔します。
教訓3:業界の看板より自分の専門性
組織の看板は自分のものではない
政府系金融機関にいた頃、筆者は「組織の看板」に守られていました。取引先が丁寧に対応してくれるのは、自分の実力ではなく組織のブランド力。これに気づいたとき、強烈な危機感を覚えました。
「この会社の名刺がなくなったら、自分に何が残るのか?」
この問いに明確に答えられないなら、それは組織に依存している状態です。どれだけ有名な組織に在籍していても、個人の専門性が伴っていなければ、外に出た瞬間に何もなくなります。
税理士資格は「自分の看板」を持てる
税理士法人に転職してから、筆者は初めて「自分の力で仕事をしている」実感を持てました。条文を調べ、判断し、クライアントに説明する。この一連の流れで求められるのは、組織の看板ではなく自分自身の知識と経験です。
税理士資格は独占業務のある国家資格です。極端に言えば、組織を離れても一人で仕事ができる。これは「自分の看板」を持っているということであり、キャリアにおける最大の安心材料です。
教訓4:転職のタイミングは早すぎるくらいがちょうどいい
「もう少し経験を積んでから」は先延ばしの口実
筆者は政府系金融機関で「もう少し経験を積んでから転職しよう」と何度も自分に言い聞かせていました。でも振り返ると、あれは単なる先延ばしでした。
正直に告白すると、筆者の最大の後悔は「もっと早く動かなかったこと」です。1年早く転職していれば、1年分早く税務の実務経験を積めていた。キャリアの加速も、年収の上昇も、1年分前倒しになっていたはずです。
完璧な準備は永遠に来ない
「全科目合格してから」「もっとスキルを磨いてから」「景気が良くなったら」——完璧なタイミングを待っていると、永遠に動けません。
筆者は2科目合格の段階で転職しました。当時は「まだ2科目しか受かっていないのに大丈夫だろうか」と不安でしたが、結果的にはそのタイミングで動いて正解でした。科目合格には市場価値がある。2科目でも、1科目でも、動ける状態にはなるのです。
転職のタイミングは、「早すぎるかも」と思うくらいがちょうどいい。実際には、自分が思うほど準備は整っていないものですが、飛び込んでしまえば環境が成長させてくれます。
教訓5:税理士資格は人生を変える劇薬
「劇薬」と呼ぶ理由
最後に、これだけは伝えたい。税理士は人生を変える劇薬です。
「劇薬」と表現するのは、良い意味でも、注意が必要な意味でも、です。税理士資格を取ったことで、筆者の人生は文字通り変わりました。年収350万円の金融機関職員から、年収800万円の上場企業勤務へ。4社を渡り歩き、税務、コンサル、事業会社と多様な経験を積むことができた。
これは税理士資格がなければ絶対に実現しなかったキャリアです。あの頃の自分には想像もつかなかった場所に、今、立っている。
税理士資格がもたらす3つの変化
変化 | 内容 | 筆者の実感 |
|---|---|---|
経済的自由 | 年収が大幅にアップする可能性 | 350万→800万(2.3倍) |
キャリアの選択肢 | 税理士法人・コンサル・事業会社・独立 | 4つの異なるキャリアを経験できた |
精神的な安心 | 独占業務があり食いっぱぐれない | 「いつでも一人でやれる」という安心感 |
ただし「劇薬」には副作用もある
税理士試験の勉強は長く厳しい道のりです。何年もの時間を費やし、プライベートを犠牲にし、何度も挫折しそうになる。合格するまでの期間は、決して楽しいものではありません。
また、資格を取ったからといって自動的にキャリアが開けるわけではない。どの法人で働くか、どんな専門分野を選ぶか、いつ転職するか——こうした選択の一つ一つが、キャリアの方向を決めます。
「劇薬」だからこそ、使い方を間違えると効果が出ない。でも、正しく使えば人生を根本から変える力がある。それが税理士資格です。
転職前の自分へ
もし、政府系金融機関で悶々としていた20代後半の自分に手紙を書けるなら、こう伝えます。
「今感じている閉塞感は正しい。お前はこの場所に居続けるべきではない。科目合格を作って、さっさと飛び出せ。特化型エージェントを使え。年収だけで選ぶな。自分の専門性で勝負できる場所を選べ。そして、早く動け。準備が整うのを待つな。」
「お前がこれから取る税理士資格は、人生を変える劇薬だ。その劇薬のおかげで、想像もしなかったキャリアが開ける。だから、今すぐ勉強を始めろ。」
——これが、4社を経験し、3回の転職を経た筆者の、偽りのない本音です。
もし今、転職を迷っている方がいるなら、この5つの教訓を頭の片隅に置いておいてください。完璧な答えは存在しません。でも、動いた人だけが見える景色がある。これだけは確かです。
