税理士なら一度は考える「独立すべきか、勤務を続けるべきか」という問題。業界経験者として正直に言えば、独立が正解とは限りません。華やかなイメージの裏にある現実を、数字とともにお伝えします。
独立税理士の年収のリアル
「独立すれば年収1,000万円超え」という話を聞くことがありますが、それは軌道に乗った後の話です。独立初年度の現実は、多くの場合もっと厳しいものです。
独立後の年数 | 年収の目安 | 備考 |
|---|---|---|
1年目 | 100万〜300万円 | 顧問先が少なく、営業活動に時間を取られる |
2〜3年目 | 300万〜600万円 | 顧問先が徐々に増え、安定し始める |
4〜5年目 | 500万〜1,000万円 | リピートと紹介で顧問先が安定 |
6年目以降 | 700万〜2,000万円超 | 規模拡大 or 高単価路線で大きく分岐 |
税理士として独立した知人の話を総合すると、最初の1〜2年は貯金を取り崩す覚悟が必要というのが共通した見解です。生活費の1〜2年分(500万〜800万円程度)の貯蓄は最低限確保してから独立すべきでしょう。
勤務税理士の年収との比較
比較項目 | 独立税理士 | 勤務税理士 |
|---|---|---|
年収レンジ | 100万〜3,000万円超 | 350万〜1,400万円 |
収入の安定性 | 低い(顧問先数に依存) | 高い(毎月固定給) |
社会保険 | 国民健康保険・国民年金(負担大) | 厚生年金・健保(会社折半) |
退職金 | なし(自分で準備) | 制度があれば支給 |
年収の天井 | なし(本人次第) | パートナーでも1,500万円程度が上限 |
見落としがちなのが社会保険の負担差です。独立すると国民健康保険料が年間80〜100万円になることもあり、表面上の年収が同じでも手取りは勤務税理士のほうが多いケースがあります。
独立のメリット
- 年収の上限がない:顧問先を増やせば増やすほど収入が上がる。年収2,000万円超の独立税理士も珍しくない
- 働き方の自由:自分でスケジュールを決められる。繁忙期でも「この日は休む」と自分で判断できる
- クライアントを選べる:価値観の合わない顧客は断れる。勤務では得られない自由
- やりがい:経営者と直接向き合い、感謝される喜びは独立ならでは
独立のデメリット・リスク
- 営業力が不可欠:税務のスキルだけでは顧問先は増えない。Webマーケティング、紹介営業、セミナー開催など営業活動が必須
- 孤独:一人事務所の場合、相談相手がいない。判断に迷ったときのストレスは大きい
- 事務作業の増加:請求書発行、入金管理、確定申告…税務以外の雑務が想像以上に多い
- 収入の不安定さ:顧問先の解約が続くと一気に収入が減る恐怖がある
- 責任の重さ:ミスがあっても組織でカバーしてもらえない。賠償責任保険は必須
独立に向いている人の特徴
私の周りで独立して成功している税理士に共通する特徴をまとめます。
- 営業やマーケティングに抵抗がない(むしろ好き)
- 特定の専門分野を持っている(相続税、医療、飲食業など)
- 人脈が豊富(前職の顧客や紹介者がいる)
- 不安定さを楽しめるメンタルがある
- 5科目合格済みで税理士登録している(科目合格のみでの独立は信用面で不利)
勤務を続けるべき人の特徴
- 安定した収入と福利厚生を重視する
- 大規模案件に関わりたい(独立では大企業案件は受注しにくい)
- 営業活動に時間を使いたくない(純粋に税務に集中したい)
- 組織の中で成長したい(同僚や上司から学べる環境)
独立と勤務の「いいとこ取り」という選択肢
最近は副業として個人の顧問先を持ちながら勤務するスタイルも増えています。副業OKの事務所で勤務しながら少しずつ顧問先を増やし、十分な収入の見通しが立ってから独立する——このステップを踏む方が、リスクを抑えた賢い独立方法だと考えます。
まとめ
独立と勤務に正解はありません。重要なのは「自分にとって何が大切か」を明確にすることです。年収を最大化したいのか、安定を求めるのか、自由な働き方がしたいのか——優先順位を整理した上で判断してください。
まずは現在の市場価値を知ることから始めましょう。転職エージェントに相談すれば、独立と勤務それぞれのキャリアパスについて客観的なアドバイスが得られます。転職エージェントの比較については別記事で詳しく解説しています。
