税理士の年収を語るうえで、見落とされがちなのが賞与(ボーナス)です。基本給が同じでも、賞与が年2ヶ月なのか5ヶ月なのかで年収は100万円以上変わります。
筆者は政府系金融機関・準大手税理士法人・大手コンサル・上場企業と4社を経験してきましたが、賞与の仕組みと実態は驚くほど異なりました。この記事では、法人の規模やタイプ別に賞与の実態をお伝えします。
税理士業界の賞与の基本構造
まず前提として、税理士業界の賞与は大きく3つのタイプに分かれます。
賞与タイプ | 特徴 | 年間支給月数の目安 | 多い法人タイプ |
|---|---|---|---|
固定賞与 | 基本給×決まった月数 | 2〜4ヶ月 | 中小事務所・事業会社 |
業績連動賞与 | 事務所の業績に連動 | 1〜6ヶ月(変動大) | Big4・準大手 |
裁量賞与 | 所長の裁量で決定 | 0〜3ヶ月(不透明) | 個人事務所 |
求人票に「賞与あり」と書いてあっても、上の3タイプのどれに該当するかで実態はまったく違います。とくに個人事務所の「裁量賞与」は、所長の気分や業績次第でゼロになることもあるので注意が必要です。
Big4税理士法人の賞与事情
Big4の賞与は基本的に業績連動型です。年間の支給月数は概ね3〜6ヶ月で、個人の評価と法人全体の業績の両方が反映されます。
職位 | 基本給(月額目安) | 賞与月数 | 賞与額(年間) |
|---|---|---|---|
スタッフ | 30〜35万円 | 3〜4ヶ月 | 90〜140万円 |
シニアスタッフ | 35〜45万円 | 3.5〜5ヶ月 | 120〜225万円 |
マネージャー | 50〜65万円 | 4〜6ヶ月 | 200〜390万円 |
シニアマネージャー | 65〜85万円 | 4〜6ヶ月 | 260〜510万円 |
マネージャー以上になると、年間賞与だけで200万円を超えることも珍しくありません。ただし、評価が低いと賞与月数が下がるため、安定した収入とは言いにくい面もあります。
準大手税理士法人の賞与事情
準大手(従業員50〜300名規模)の賞与は、固定部分+業績連動部分の組み合わせが多い印象です。年間支給月数は2.5〜4.5ヶ月が目安。
筆者が在籍していた準大手では、基本給の3ヶ月分が標準で、個人評価によって±0.5ヶ月の変動がありました。5年目で年収700万円前後になりましたが、そのうち賞与は約150万円を占めていました。
準大手の賞与で注意すべきポイント
- 固定部分と変動部分の内訳を入社前に確認する
- 「賞与4ヶ月」の表記が「基本給×4」なのか「月収×4」なのかをチェック
- 繁忙期手当が賞与に含まれているケースがある
中堅事務所の賞与事情
従業員10〜50名規模の中堅事務所は、賞与の幅が最も大きい層です。
中堅事務所のタイプ | 賞与月数 | 特徴 |
|---|---|---|
高単価案件中心(相続・組織再編) | 3〜5ヶ月 | 準大手に匹敵する支給額 |
法人顧問中心 | 2〜3ヶ月 | 安定しているが上限あり |
記帳代行中心 | 1〜2ヶ月 | そもそも原資が限られる |
中堅事務所を選ぶ場合は、求人票の「賞与実績」だけでなく、事務所の主力業務と顧客単価を面接で確認してください。これが賞与の原資を決めているからです。
個人事務所の賞与事情
個人事務所の賞与は正直最も読みにくいです。所長の裁量で決まるケースが多く、「今年は業績が良かったから多めに出す」「今年は厳しいからカット」ということが起こり得ます。
求人票には「賞与2ヶ月」と書いてあっても、実際には1ヶ月分しか出なかったという話は珍しくありません。個人事務所への転職を考えるなら、面接で直近3年間の賞与実績を確認することを強くおすすめします。
事業会社(上場企業)の賞与事情
筆者が現在在籍している上場企業の場合、賞与は年間4〜5ヶ月が標準です。会社の業績連動部分もありますが、基本的には安定して支給されます。
比較項目 | 税理士法人 | 上場企業 |
|---|---|---|
賞与月数 | 2〜5ヶ月 | 4〜5ヶ月 |
安定性 | 業績・評価で変動 | 比較的安定 |
支給時期 | 法人による | 6月・12月が一般的 |
決算賞与 | ある法人とない法人 | 業績次第で上乗せ |
事業会社の賞与が安定しているのは、上場企業には株主の目があるため従業員の待遇を極端に削りにくいという構造的な理由があります。
賞与に関してよくある落とし穴
「年収●●万円(賞与含む)」の罠
求人票で「年収600万円」と書いてあっても、その内訳が「基本給400万円+賞与200万円」なのか「基本給500万円+賞与100万円」なのかで安定性が全然違います。賞与は減額リスクがあるため、基本給の比率が高い方が安全です。
試用期間中の賞与カット
入社後3〜6ヶ月の試用期間中は賞与が支給されない、または減額されるケースがあります。転職時期を6月入社にすると最初の冬のボーナスが満額出ないことも。入社時期と賞与の関係は事前に確認しましょう。
みなし残業代が賞与の計算基礎に含まれない
「基本給30万円+みなし残業代10万円」という場合、賞与の計算基礎が30万円になる会社と40万円になる会社があります。前者の場合、見かけの賞与月数が同じでも実際の支給額が少なくなります。
まとめ:賞与は「年収の内訳」で判断する
年収だけを見て転職先を決めるのは危険です。基本給と賞与の比率、賞与の固定部分と変動部分の内訳、過去の支給実績——この3点を確認するだけで、実態が見えてきます。
筆者が4社を渡り歩いて最も実感したのは、「賞与の仕組みを理解しているかどうかで、転職の成否が変わる」ということ。目先の年収に飛びつく前に、賞与の中身まで分解して比較する習慣をつけてください。