会計事務所や税理士法人で経験を積んだ税理士が、事業会社(一般企業)の経理・税務部門に転職するケースが増えています。私の周りでも、ここ数年で事業会社に移った同業者が目に見えて増えました。
しかし、事業会社への転職は「事務所畑」の税理士にとって未知の世界でもあります。この記事では、業界経験者として実際に見聞きした情報をもとに、事業会社転職のリアルをお伝えします。
事業会社の税務ポジションとは?
事業会社で税理士が活躍できるポジションは主に以下の3つです。
- 税務担当(Tax Staff / Tax Manager):法人税・消費税の申告、税務調査対応、移転価格文書化など
- 経理・財務部門:決算業務、管理会計、予算策定。税務知識を活かしながら経理全般を担当
- 内部監査・コンプライアンス:税務リスクの管理、内部統制の整備。上場企業で需要が高い
特に上場企業やグローバル企業では、社内に税務の専門家を置く動きが加速しています。税理士資格を持つ人材への需要は年々高まっている実感があります。
事業会社に転職するメリット
1. ワークライフバランスの劇的な改善
事業会社転職の最大のメリットはWLBの改善です。会計事務所の繁忙期(1〜3月)のような極端な長時間労働は基本的にありません。
項目 | 会計事務所 | 事業会社 |
|---|---|---|
平均残業時間 | 月30〜60時間(繁忙期は80時間超も) | 月10〜30時間 |
繁忙期 | 1〜3月(確定申告)、5月(3月決算) | 四半期決算時(年4回、各1〜2週間) |
有給消化率 | 30〜50% | 60〜80% |
土日出勤 | 繁忙期はあり | 基本なし |
同業者の間では「事業会社に行ったら人生変わった」という声を本当によく聞きます。特に子育て中の方や、試験勉強と両立したい方には大きなメリットです。
2. 年収が上がるケースが多い
意外に思われるかもしれませんが、中小会計事務所から上場企業に転職すると年収が100〜200万円上がるケースは珍しくありません。事業会社の給与体系は業績や規模に連動しており、大手企業ほど基本給が高い傾向があります。
- 中小事務所(年収350〜450万円)→ 上場企業経理(年収500〜650万円)
- 中堅法人(年収500〜650万円)→ 大手企業税務(年収650〜900万円)
- Big4(年収600〜800万円)→ 外資系企業Tax Manager(年収800〜1,200万円)
3. 福利厚生の充実
大手企業の福利厚生は、一般的な会計事務所とは比較にならないほど充実しています。住宅手当、家族手当、企業年金、持株会、カフェテリアプランなど、年収には表れない「見えない収入」が大きいです。
事業会社に転職するデメリット
1. 業務の幅が狭くなる
会計事務所では様々な業種のクライアントを担当しますが、事業会社では自社の税務だけを担当します。「いろんな会社の税務を見たい」という方には物足りなく感じるかもしれません。
2. 税理士としての専門性が薄れるリスク
事業会社では税務以外の業務(経理、管理会計、予算策定など)も担当することが多く、税務の専門性を深める機会は減る傾向があります。将来的に税理士として独立を考えている方は、この点を慎重に考える必要があります。
3. 税理士資格の活かし方が限定的
事業会社では税理士として署名する機会はなく、あくまで社内の一社員として働きます。「税理士」という肩書きの価値は、事務所にいるときほど感じにくいかもしれません。
事業会社転職に向いている人・向いていない人
向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
WLBを最優先したい | 多様な業種の税務を経験したい |
安定した収入と福利厚生が欲しい | 将来的に独立開業したい |
一つの企業の税務を深く理解したい | 税理士としての専門性を追求したい |
マネジメント職を目指したい | 変化の多い環境が好き |
事業会社への転職を成功させるポイント
- 上場企業の決算経験があると評価が高い。なくても法人税申告書の作成経験は必須
- 連結納税や組織再編税制の知識があると大手企業で重宝される
- Excelスキルは意外と重要。VLOOKUPやピボットテーブルは最低限使えるように
- 面接では「なぜ事務所ではなく事業会社なのか」を明確に説明できるように準備する
まとめ
事業会社への転職は、税理士のキャリアにおける大きな分岐点です。WLBと安定を求めるなら事業会社、専門性と独立を目指すなら事務所というのが、私の経験から導き出した結論です。
事業会社の税務ポジションは非公開求人が多いため、転職エージェントの活用が不可欠です。税理士向け転職エージェントの比較については別記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
